シュガーレスでお願いします!

「だから、困ってるんだ」

想定と逆なのは私とて同じだ。

自分のお店の経営、テレビ番組の収録、雑誌の取材、コンクールへの出品。

一緒に暮らしたからこそ、慶太の多忙さが良く分かる。

しかし、慶太はそんな忙しい日々を過ごす中でも私への愛情表現を欠かすことはない。

疲れているなら先に寝ていればいいのに、顔が見たいからと夜更かしして。

少しでも時間ができたら、砂糖をまぶしたような甘ったるいメッセージを送ってくる。

……忙しい合間を縫い過ぎて、もはや忙しいのかすら疑わしい。

「私としてはもう少し慎みのある生活を送りたいんだが」

「そうですね……。仲が良いのは喜ばしいことですけど、新婚時代からあまり熱を上げ過ぎても大変ですからね。夫婦生活長いんですから細く長―く続けるためにも、ここは比呂先生からビシッと言ってみたら良いのでは?」

遠藤さんの言う通りである。

長い結婚生活、最初が肝心だ。

今の生活を続けていては遅かれ早かれいつか破綻してしまう。

私は遠藤さんの助言通り、これ以上慶太のペースに流されないように一言物申すことにしたのだった。

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