シュガーレスでお願いします!

その日仕事を終えると、慶太が先に帰宅していて夕飯を作って待っていた。

「ただいま」

「おかえり。夕飯、もうすぐできるから」

対面型のキッチンから声を掛けてくる慶太の身体を覆っているのは、例のエプロンである。

昨晩の情景が思い出され、私は慌てて慶太から目を逸らした。

なんで、よりにもよってそのエプロンを使うんだ!!

慶太はそんな私の様子に気に留めることなく、楽しそうにお玉で鍋をかきまわしている。

フランス修行時代から自炊していただけあって、慶太の料理スキルはちょっとしたものである。

家事は分担しているので、先に帰宅すれば私が夕飯を作ることもあるが、慶太の方が圧倒的に早いし美味い。

キッチンから漂う匂いから察するに、今日の夕飯は親子丼とみそ汁だろう。

仕事用のトートバッグを床に下ろすと、ランチョンマットと箸がセットされているダイニングテーブルの上に得体の知れない紙袋が置いてあるのに気がつく。

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