シュガーレスでお願いします!
「これ何?」
「ちょっと遅くなったけど、昨日のフランス土産だよ」
慶太はそう言うとコンロの火を止め手を拭くと、ダイニングテーブルまでやってきた。
「普通なら本場のスイーツを買ってきたいところだけど、スイーツ苦手な比呂にはネックレス」
慶太は紙袋の中から小さな箱を取り出し、蓋を開け、アクセサリーを手にすると私の背後に回り留め具をつけた。
「ほら、似合う」
「ありがと……」
シルバーのチェーンに一粒のダイヤモンドが輝くシンプルなネックレスは、地味過ぎず、派手過ぎず、化粧気の薄い私の顔立ちでも良く映えた。
お土産がネックレスだったのは、結婚指輪が唯一の装飾品である私への気遣いだろうか。
それとも、これも私を手のひらの上で転がすための作戦か……?
やることなすこと全てが疑わしく思えて、首に下げられたダイヤモンドを指で弄んでいると、急に頭上に影が差した。