シュガーレスでお願いします!

「慶太、ちょっと座ってくれる?」

そう指示すると、なにも知らない慶太は素直にダイニングチェアに座ろうとする。

「そっちじゃない。床に座るんだ」

私はあえて穏やかな笑みを浮かべ、無情にも冷たいフローリングを指差した。

「あれ?もしかして……ものすごく怒ってる?」

「ほう?よくわかったな?」

慶太はようやく自分が説教される立場となったことに思い至るのであった。

私が怒っているように見えたのは、断じて空腹のせいではない。

悪戯をした小学生を叱るかのごとく床に正座をさせ、夫婦のあり方について切々と論じ始める。

「慶太、私に嘘をついたよな?」

「嘘?」

「新婚夫婦はエプロンしたままイチャつくって話だ」

ああっ!!口にするのもこっぱずかしい!!

なぜ、あんな口からでまかせを信じてしまったのだろか。

慶太が久し振りに帰ってきたこともあり、自分でも知らないうちにはしゃいでいたのだろう。
あの日の浮かれた自分を殴ってやりたい。

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