シュガーレスでお願いします!

「もしかして……誰かに話した……とか?」

私は黙って小さく頷いた。

「比呂のことだから、家庭の話は職場ではしないと思ってたんだけどな……」

慶太はあちゃーと大袈裟に首の後ろに手をやり、頭を掻いた。

嘘を見破られた後ろめたさは一切なく、なんならチッと舌打ちまでした。

貴様っ!!最初からバレないと踏んでいたな!!

「なんでそんな嘘ついたんだ?」

「比呂が可愛くて、つい……」

“つい”で済むならこの世に弁護士など不要である。

弁護士の存在意義をこんな形で再確認するなんて、結婚などするもんじゃない。

「ごめんね」

慶太は悪いなんて微塵も思っていない軽い調子で謝った。

……また、それだ。

私は大きく息を吐きその場にしゃがんで目線を合わせると、足を崩して胡坐をかいている慶太に言った。

「なあ、こういうこと少し控えないか?」

ことあるごとにスキンシップしたり、息をするように甘いセリフを吐いたりしなくてもいい。

結婚生活に不満があるわけではない。

慶太の作るご飯は美味しいし、掃除も上手、洗濯だって得意だ。

夫として非の打ち所がないけれど、隙あらば私の気を引こうとするのがいただけない。


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