シュガーレスでお願いします!
3.慶太と愉快な仲間達
(くっそう……。慶太のやつ……!!)
私は仏頂面でデスクに頬杖をつき、誰にも悟られないように慶太への恨み節を吐いていた。
君島さんが調べてくれた判例に目を通しながら、頭の片隅は別のことでいっぱいだ。
慶太の説得にあえなく玉砕した私はほとほと困り果てていた。
弁護士の仕事といえば裁判のイメージが強いけれど、裁判に持ち込む前に和解するように交渉・説得を行うのも、大事な役割のひとつである。
互いの主張を汲んだうえで落としどころを探すというのは、なかなか難儀な作業であり、弁護士としての器量や人間力が試される。
節度のある生活を送りたい私と。
これまで通り、乳繰り合いたい慶太に。
果たして妥協点はあるのだろうか?
真面目に考えるのもバカバカしい議題なだけに、容易く思考を放棄しそうになって、慌てて首を振る。
いや、自分の夫を説得できなくて何が弁護士だ。
そう、私は今弁護士としての岐路に立たされているのだ。
こうなったら私の弁護士生命をかけて、慶太にうんと言わせて見せる。
負けてなるものかと、決意を新たにし密かに闘志を燃やしていく。