シュガーレスでお願いします!
昼休憩の間に慶太に連絡すると、今日は一日店にいるとのことだった。
サインが欲しいと熱望している同僚をお店に連れていくと伝えたら、慶太は快く引き受けてくれた。
定時きっかりに仕事を切り上げ、君島さんと連れ立って店まで歩いていく。
慶太の店は奥寺法律事務所から歩いて5分ほどのところにある。
銀杏並木を抜け、横断歩道を歩くとまもなく店の全景が見えてくる。
パリの20区にあるようなブラウンを基調としたクラシックな外観は、まるで慶太の作るチョコレートケーキのよう。
ホワイトキャンバスに柑橘系のソースをひと垂らししたような模様の看板が良いアクセントになっている。
“soleil”は人通りの多い大通りに面した2階建ての店舗で、1階はケーキ売り場と厨房、2階はカフェスペースとなっており、厳選した紅茶やコーヒーと一緒に彼のケーキを食べることができる。休日となると1時間待ちは当たり前の大盛況らしい。
重みのあるガラス扉を開けると軽やかにドアベルが鳴り、店中に来客を知らせた。