シュガーレスでお願いします!
(香子先生ってば酷い……)
主席弁護士であり、雇い主である香子先生に対して、逆らえる人間はうちの事務所にいるはずもない。
たとえどんなに無茶な依頼であろうと香子先生がうんと言えば、仕事として引き受けなければならない。
……つまり端的に言えば人使いが荒いのである。
私は香子先生の言いつけ通り、一万円札片手にsoleilまでケーキを買いに出かけた。
先日まで香子先生がずっとかかりきりだった特許侵害についての裁判がようやく終わり、弁護側の完全勝訴と相成ったので、事務所のみんなに大盤振る舞いしたい気分なのだろう。
soleilのガラス戸を開けると、お決まりのドアベルがカラカラと鳴った。
出来ればこの間の清水さん以外の人に接客されたいなと淡い期待を抱いてみたが、こういう時に限って、タイミングが悪いんだよな。私という女は。
「いらっしゃいま……」
来客を出迎えるお決まりの挨拶が途中で止まり、ショーケースの向こう側で清水さんが苦い顔をしている。何しに来たのだという視線がナイフのように身体のあちこちに刺さる。