シュガーレスでお願いします!
「ごめんね、比呂先生。あいつ感じが悪くて……」
「いえ、私は……」
大輔さんは私にしか聞こえないように声のボリュームを抑えてこう付け加えた。
「尊敬する慶太先生に奥さんがいたのが、相当気に食わなかったみたいでさ……。八つ当たりしてんだよ」
八つ当たりって……。そんな幼稚なことする?
いやいや、待て。彼女はまだ若い。感情の赴くまま行動に移したとしてもおかしくはないか?
「それで、今日は何をご所望で?」
大輔さんに尋ねられて、私はようやく当初の目的を思い出したのだった。
「香子先生のお使いで……。ケーキを10個選んでもらっていいですか?」
「はい。承知しました。種類は何でもいい?」
「あ、ガトーショコラが食べたいって言ってました」
「ああ、香子先生も昨日の放送見てたんだね」
大輔さんはsoleilの常連でもある香子先生の人柄もしっかり熟知していた。
「ガトーショコラってこの店にありましたっけ?」
ふと疑問に思って確認すると、大輔さんはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。