シュガーレスでお願いします!
「そういうお客様がいらっしゃると思って、本日限定でご用意しておきましたよ」
ドヤ顔でショーケースの最上段、本日限定ガトーショコラを指さす大輔さんに、私はおお~と惜しみない拍手を送った。
さすが、商売上手。
芸術家気質でやや商売っ気に欠ける慶太に対し、もともと某有名ホテルのパティシエとして長年働いていた大輔さんは、実直な経営センスを持っている。
そう、誰もがみな目新しいケーキばかりを買いたがるわけではない。
昔からある王道の味が食べたい人もいれば、ちょこっとだけ世間の流行に乗っかってみたいというライト層だっている。
大輔さんはそういった世間の波と経営のバランス感覚に優れていて、慶太とは違った意味でsoleilになくてはならない存在なのである。
もちろん、現役パティシエとしても慶太に負けず劣らずの腕前を持っている。