シュガーレスでお願いします!
「これでどう?」
大輔さんはショーケースからガトーショコラを含め10個のケーキを銀トレイに取り分けた。
つやつやのチョコレートでコーティングされたチョコレートケーキ。
鮮やかなピンク色のラズベリーのソースが掛かったチーズケーキ。
噛んだら果汁が溢れ出しそうなフルーツタルト。
どれも、このまま美術館に飾っておけるんじゃないかと思うほど美しい。
慶太の作るケーキは本当に彩りが豊かで、見ているこちらが元気をもらえそうなくらいだ。
……でも。
(私はどれひとつとして食べられないんだよな……)
そう思うと、急に慶太とケーキに対して申し訳ない気持ちが湧き上がってくる。
「私、清水さんに八つ当たりされて当然なのかも。奥さんなのに慶太の作ったケーキを一度も食べたことないし……」
「甘い物が食べられないんだっけ?」
「はい。昔からそういう体質で……」
多少なら平気だが、砂糖が大量に使われるような料理やスイーツを食べると吐き気を催す厄介な体質だ。