ライアーピース2
Piece1
あー。むかつく。
勉強なんてうざってぇ。
進路なんか知るかっつの。
高校なんざ行きたくもねぇ。
母さんに金払ってもらって勉強したいなんて思わねぇ。
早く家を出たいんだよ、俺は。
「申し訳ありません!お待たせしました!」
扉を勢いよく開けて、
母さんが慌てた様子で顔を出した。
その顔を見て、舌打ちを繰り出す。
母さんは俺を一瞥して隣の席に座った。
「これは、これは、二宮さん。
お忙しい中すみませんね」
担任の坪倉が眼鏡を上げながらそんなことを言う。
そう思うんなら呼び出すんじゃねぇよ。
「いえ、その……うちの子が何か?」
「その、ね?進路調査票を提出してもらったんですが……
白紙でして。どうしたものかと思いまして」
はっと息をのむ音がした。
母さんが俺を見つめる。
そしてすぐに担任に向かって頭を下げた。
「申し訳ありません。家で言い聞かせます。
また後日、きちんと提出させますので」
母さんは何度も頭を下げて謝った。
担任が苦笑いをして、フォローをする。
根はいい子だし、頭もいいのでやれば出来る。
どこの高校でも大丈夫だ、なんて言いやがった。
本当にそう思ってんのかすら分かんねぇ。
教室には担任の苦笑いと、
母さんの謝る声だけが響いて、
窮屈な三者面談が終了した。