ライアーピース2
おっさんはにやっと笑うと、中に入っていった。
それについて行くと、独特な匂いに包まれていた。
なんだここ。
この匂い、なんか慣れねぇ!
おっさんはどんどん進んでいく。
進んでいく先々には爺さん、婆さんがうじゃうじゃいて、
おっさんのような服装をした人たちが世話をしていた。
おっさんは突き当りの部屋で止まると、
コンコンとノックをした。
「入りますよー」と一声かけて扉を開ける。
中は小さな個室になっていて、
ベッドが一つにテレビ、クローゼットがあった。
そこに一人の老人が座っている。
昨日の爺さんだった。
「宮本さん。今日は紹介したい子がいます。いいですか?」
昨日も思ったけど、話すにしては少しでかすぎる声量で、
おっさんは爺さんに訊ねた。
爺さんはこくりと頷いて俺を見た。
「えっと、君。名前は?」
「楓」
「宮本さん、楓くんです。
彼は、中学生です。
仲良くしてあげてくださいね」
黙って俺を見ていた爺さんは、
目を上げて体を伸ばすと、初めて口を開いた。
「あんたぁ、なんでそんなに怯えているんじゃ」
「は……?」
凍り付いたように固まった。
一瞬のうちに、時が止まったかのように
何も聞こえなくなる。
ぐにゃりと視界が歪んで、気持ち悪さが襲う。
なんて言った?
この爺さん、俺に、なんて……。
ぽんっと肩を叩かれてはっと我に返る。
すると一気に音や匂い、全ての感覚が戻って来た。
おっさんを見ると、おっさんはにっこり笑って
爺さんと話をしている。
爺さんはもう、俺を見てはいなかった。