ライアーピース2
Piece3
「おい、楓。土曜日お前のこと見かけたんだけど、
街中のカフェにいなかった?」
月曜日。智也に話しかけられた。
ああ、見つかったのか。面倒だな。
親が離婚してるなんて知られたくない。
ケータイから視線を上げることなく、俺は淡々と言った。
「いたよ。それがどうかしたか?」
「一緒にいた人、誰だ?」
「親父。外国に出張中だけど、土曜日
一日だけ帰ってきてたんだよ。それで会ってた」
智也はふーんと言っただけで、何も言わなかった。
こういうとこ、男で良かったと思う。
女だったらここで根掘り葉掘り聞かないと
気が済まないんだよな。
良かったよ。本当に。
そんなことになったらうざったくてしょうがないもんな。
智也、聞かないでくれてありがとう。
単に単純すぎてアホなんだろうけど。
教室はまだ春だっていうのに
受験モードに突入していた。
どいつもこいつも机にかじりついている。
智也でさえもそうしているから、
俺だけ一人取り残されている。
いつもケータイでゲームをしたり昼寝をしたりするだけ。
毎日が退屈だった。早く卒業したい。
今日もだらだら過ごして一日を終えた。
帰り際、担任が俺を呼んだ。
「二宮。進路調査票、再提出しろよ?」
「あ?だから高校なんか行かねぇつってんだろ」
「親御さんとしっかり話し合えよ」
「うぜぇな!放っとけよ」
「二宮!」
ああ。もううんざりだ。
家にいれば母さんから進路、進路。
学校にいれば担任から進路、進路って言われる。
何も言われないところに行きてぇ……。
「あっ……」
そう思った時、あそこが浮かんだ。
いやいや、頼るわけにはいかねぇ、と思って首を振る。
それでも、そこ以外思いつかなかった。
あそこなら、とやかく言われねぇ。
行ってみるか……。
【桜えん】に。