ライアーピース2






「おい」





自転車を道に投げ捨てて土手に寝転んでいたら、
誰かが話しかけてきた。


目を閉じてその声を無視する。
しばらくそうしていた。









「おい」



また、声がした。


なんだよと思って目を開けると、
見知らぬ男が俺を覗き込んでいた。


誰だこのおっさん。何で俺を見てんだ?


「あ?なんだよ」


「君、こんなところに自転車置いてちゃ危ないだろう」


そう言われて、自転車を見る。そして鼻で笑った。


「は?別に危なくねぇだろ」


「通る人の邪魔になる」


「うっせぇな。邪魔になんかなんねぇよ」


もう一度目を閉じる。
しばらく何も聞こえなかった。


……行ったか?
変なおっさん。俺なんかほっときゃいいのに。


ため息をつくと、ガチャガチャと大きな音がした。


びっくりして目を開けて起き上がると、
さっきのおっさんが俺の自転車を動かしていた。


「ちょっ!何やってんだよおっさん!」


「何って、君がやらないから俺がやってやってんだ。
 危ないからどけなさい」


「てめぇ、勝手に触ってんじゃねぇよ」


「なら初めから動け」


なんなんだこのおっさん。


俺にこんなこと言ってくるやついねぇよ。


ていうか、こんなところで何やってんだ?


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