ライアーピース2
*
「おい」
自転車を道に投げ捨てて土手に寝転んでいたら、
誰かが話しかけてきた。
目を閉じてその声を無視する。
しばらくそうしていた。
「おい」
また、声がした。
なんだよと思って目を開けると、
見知らぬ男が俺を覗き込んでいた。
誰だこのおっさん。何で俺を見てんだ?
「あ?なんだよ」
「君、こんなところに自転車置いてちゃ危ないだろう」
そう言われて、自転車を見る。そして鼻で笑った。
「は?別に危なくねぇだろ」
「通る人の邪魔になる」
「うっせぇな。邪魔になんかなんねぇよ」
もう一度目を閉じる。
しばらく何も聞こえなかった。
……行ったか?
変なおっさん。俺なんかほっときゃいいのに。
ため息をつくと、ガチャガチャと大きな音がした。
びっくりして目を開けて起き上がると、
さっきのおっさんが俺の自転車を動かしていた。
「ちょっ!何やってんだよおっさん!」
「何って、君がやらないから俺がやってやってんだ。
危ないからどけなさい」
「てめぇ、勝手に触ってんじゃねぇよ」
「なら初めから動け」
なんなんだこのおっさん。
俺にこんなこと言ってくるやついねぇよ。
ていうか、こんなところで何やってんだ?