ライアーピース2
Piece2






土曜日。


小洒落たカフェに行くと、
父さんがこっちに向かって手を振っていた。


軽く舌打ちをしてそっちまで歩く。


父さんの座るテーブルの上には珈琲があった。


「よぉ。楓、元気か?」


「……見りゃ分かんだろ」


ドカッと向かいの席に座って長くもない足を組む。


店員がやってきて注文を聞くから、「珈琲」と短く言った。


「楓は大人だなぁ。父さん、お前くらいの歳の頃は
 珈琲なんて飲めなかったぞ」


「俺、大人だよなぁ?」


「ああ、そうだな」


父さんがニカッと笑う。


笑うとえくぼが出来て、昔の俺みたいだと思う。


昔は俺もよく笑ったな。
バカみたいに、何にも知らないで。


「家を出ようと思ってる」


俺が言うと、父さんの顔色が変わった。


笑顔が途端に剥がれ落ちていく。


ついに真剣な顔つきになると、
指を交差させ、その手に顎を乗せた。


「それはダメだ」


「なんでだよ。さっき大人だっつったろ」


「大人らしいとう意味だ。お前はまだまだ子どもだよ」


「なんだよ、どこがガキなんだよ」


「そういうところだ」


「なんだよ、そういうとこって!」


研修中と書かれた名札をつけた店員が
俺の珈琲を持ってきた時、
俺はバンっとテーブルを叩きつけて立ち上がった。


店員がびっくりして手を引っ込め、
そそくさといなくなる。


周りの客も訝しげに俺を見つめていた。


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