ライアーピース2



商店街をぶらぶら歩いていく。


みんなが俺を避けた。


そんなに怖いか?
関わりたくねぇって思ってんのバレバレ。
まぁ、こっちだって関わりたくねぇけどな。


でも人からあからさまに避けられると
なんでか知んないけどむかつく。


怒鳴り散らして暴れたいけれど、
めんどくさいからやめた。




ふと、ポケットに手を突っ込んだ時、
中でカサっと何かが手に当たった。


なんだこれ。


不思議に思ってその何かを引き抜く。


ぐしゃぐしゃに丸められた紙が出てきた。


それを広げてみると、それは名刺だった。


あいつの、あのおっさんの、名刺。





【桜えん 介護福祉士 佐々木 陸】




なんかどっかで聞いた名前がそこに書かれていた。


なんだ、ちゃんと仕事してんのか、あの人。
ちゃんとした名刺だから、妙に説得力がある。


このおっさん、今日も仕事してんのかな。
あの土手に、来ねぇのかな。




その名刺を眺めて歩いていると、
いつの間にか昨日の施設、【桜えん】にたどり着いていた。


なんでここに来てしまったんだ?
来るつもりはなかったのに……。



帰ろうと施設に背を向けて、
一歩足を前に出した時、声をかけられた。


「君。昨日の?」


うっ。しまった……。見られた。
よりにもよってめんどくせぇやつに見つかるとは。


舌打ちをしてくるりと回れ右をした。
そこには昨日のおっさんが立っていた。


洗濯物なのか、シーツを沢山持って、俺を見ている。


「なんだ、来たんだな」


「べ、別に来たくて来たわけじゃ……」


「見てくか」


「……おう」


なんでか、本当にこの時の俺はどうかしていた。


ただ、この変なおっさんの働いてる姿を
この目で確かめてやる!って感じの勢いだったと思うけど。


「ついてこい」


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