友達以上恋人未満
飲みかけのお茶を愛車の

ドリンクホルダーに置いてエンジンをかけた。


裕子は窓を開けてこの海

岸沿いの道を走るのが好きだった。


特にこの時期は他県から

の観光客も殆どなく交通

量も少ないから裕子の車

の後に渋滞も作る事もない。


海水浴の時期になるとマイペースの裕子の車の後には


数台の渋滞が左折する角まで必ず出来てしまう。
酷い時には最後尾の車が

見えないくらい連なる事もある。


後続車に申し訳無いとは

思いつつも何処に避難す

る事も出来ないこの海岸

沿いのお気に入りの道路

にはいつも決まって


「ごめんなさい、私の後ろに付いた事を諦めて。」


と独り言をいって合流する。

それはいつ来るか分らない後続車に向かって言う時もある。


今日もその儀式はやった。

きっとこれも言わないと気が済まないのだろう。

今日はもうひとつポツリとひとりごちた。


「それにしても、綺麗だったな」
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