君への愛は嘘で紡ぐ
そして私は笠木さんの真似をしようとしているわけではない。


結果そう見えるだけだ。


「私は、知らないことに興味があるのです。やってみたいのです」


フォークはケーキを乗せたまま皿に戻る。


髪を染めることも、友達と遊ぶことも、ラーメンを食べることも。


どれも、今まで通りの生活を送っていたら、できないことだ。


それと同じように、アルバイトをしてみたい。
ただそれだけだ。


「だとしても、だよ。今は我慢するときだと思うよ。ルールの中で、できることをする。当たり前のことじゃん」


瑞希さんはフルーツタルトを頬張る。


たしかに瑞希さんの言う通り、当たり前のことだ。
だが、高校を卒業すると、私には自由はなくなる。


髪を染めることはもちろんできない。
こうして瑞希さんと由実さんと遊ぶことも、どこかに料理を食べに行くことも、叶わなくなる。


アルバイトをするなら、今しかないのだ。


「お嬢様」


自分の気持ちを堪え、膝の上の拳を握っていたら、笠木さんの声が近くでした。


顔を上げると、目の前に笠木さんが立っていた。


「半日だけ、体験アルバイトをするのはどうだ?それなら、俺たちが余計なことを言わない限り、知られることはない」
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