君への愛は嘘で紡ぐ
その提案を聞き、瑞希さんと由実さんの顔を交互に見る。


それでも二人は納得していない。


「なんで笠木は、えんを悪の道に進めようとするの。大学生になるまで、一年半の辛抱なんだよ?」


笠木さんは答えない。


やりたいことをやらせようと思っている以前に、わかっているのだろう。
私に自由がなくなることを。


「円香ちゃん、どうしてアルバイトしたいの?」


やってみたいということ以外の理由がない。


答えようがなくて、私も黙ってしまう。


「お嬢様。他人の意見に振り回されるな。お嬢様は、どうしたい」


笠木さんの目を真っ直ぐ見つめる。
思わず頼ってしまいたくなるほど、強い視線だ。


今までなら、というより、あの家なら、私の意思はないようなもので。
好きなようにしてもいいと言われたのは、初めてに近い。


私が意見を持つことを、自由に行動することを許されたような気がした。


「一日でもいいです。私は、アルバイトをしたい」


笠木さんが満足そうに笑う一方で、瑞希さんは不満そうにフルーツタルトを食べきる。
由実さんは、飲み物の揺れる水面を見つめているのだろうか。
俯いていて、感情が読み取れない。


二人の思いを無下にした罪悪感が込み上げてくる。
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