君への愛は嘘で紡ぐ
「じゃあ、それ食べたら声かけて」


笠木さんはそう言うと、離れていった。


「笠木の野郎、絶対許さない。あいつのせいで、えんがどんどん不良の道に進む」
「違いますよ」


瑞希さんの機嫌は直らないままで、私は睨まれた。


「……私は、笠木さんにいろいろな世界を見せてもらっています。今までは、家と学校と……を行き来するだけの生活でした」


社交パーティーのことは言えず、口ごもってしまった。


「閉じた生活でしたので、転校してから新しいことばかりなのです。それは笠木さんだけではありません。瑞希さんも。由実さんも。私にいろいろ教えてくださいました」


二人は顔を合わせる。
私の言っていることが伝わっていないのか、首を傾げている。


「私たち、円香ちゃんに何もしてないよ」
「私と、友達になってくださいました。今こうして、遊んでくれています。私のために怒ってくれます」


怒られたことは何度もあるが、上から押さえつけるようなものではない怒られ方は、初めてだった。


「どれも、ルール破ってないし」


瑞希さんはジュースを一気に飲み干した。


私だって、ルールを破ってはいけないことは、わかる。
だから、髪を染めたことは反省した。
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