君への愛は嘘で紡ぐ
そこに写っているのは、間違いなく笠木さんだ。


心臓がうるさくなる。
笠木さんの存在を知られていることで、笠木さんに迷惑をかけるような気がするからだ。


「どうして……」
「妻になる者の身辺調査をしたまでです」


鈴原さんは自分のほうに写真を向けた。


「この男と関わるようになって、円香さんはおかしくなった。髪を染め、バイトをする。円香さんらしくない行動ばかり」


本当に、全て知られている。
言い返したくても、言葉が出てこない。


というか、鈴原さんは、私が転校したときから私のことを調べていたのか。
そんなに前から、私が許嫁であると知っていたのか。


どうしてお父様は教えてくれなかったのだろうと思ったが、私から会話をしないようにしていたから、無理もないだろう。


「この男のせいで、円香さんの価値が下がる」


鈴原さんは笠木さんの写真を落とし、踏みつけた。


「私の、価値……?」
「そうです。あなたは気品溢れるお方です。庶民と馴れ合うことも、許されません」


それは、由実さんと瑞希さんのことを言っているのだろう。


二人のことも知られていた。


この人への恐怖心が芽生えてくる。


「どうして庶民の学校になど転校したのですか」


差別的発言、行き過ぎた調査。


鈴原さんの印象が悪い方向に変わっていく。
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