君への愛は嘘で紡ぐ
鈴原さんとの婚約は解消されず、そのままずるずると関係が続いているという状態だ。
鈴原さんには申しわけないが、一ミリも気持ちは動いていない。


「なにそれ」


瑞希さんが文句を言いたそうにするが、やはりそこはわかりあえないことなのだろう。


「……ねえ、円香ちゃん。私たちのことはなにも言われなかったの?」


由実さんの勘は鋭かった。
言ってきたのは鈴原さんだが、お父様もよく思っていなかっただろう。


「その無言は言われたってことかな」


由実さんは苦笑した。


「じゃあ、今めちゃくちゃまずい状況なんじゃ……」
「あ、いえ。二人のことは、説得して認めてもらいました。大切な友人を失いたくなかったので」


笠木さんに会えなくなって、その上二人も離れていくとなると、きっと私は私の心を永遠傷付けることになる。


それだけは避けたかった。
もうお父様に迷惑をかけるような行動をしないことを条件に、許してもらった。


「笠木くんを友人って言うことは出来なかったんだ……?」
「言いましたが、納得してもらえませんでした」


誰も何も言わず、ほかの客の声がよく聞こえる。
そのとき、瑞希さんが注文した唐揚げが運ばれてきた。
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