君への愛は嘘で紡ぐ
「……えんは、笠木に会いたい?会いたくない?」


瑞希さんは唐揚げの上にレモンを絞る。


「ですから……」
「えんの気持ちを聞かせてよ。親のこととか関係なく、えんがどうしたいか」


瑞希さんは唐揚げを頬張る。
暑かったらしく、水を流し込んでいる。


お父様関係なく、私がどうしたいか……


「……笠木さんに、会いたい……」


瑞希さんは唐揚げを飲み込むと、満足そうに笑った。


「じゃあ、協力してあげる」
「協力って、どうするの?」


私が聞くより先に、由実さんが聞いた。


「君たち、私の話聞いてた?今、私のお母さんは入院してるんだよ。笠木と同じ病院に」


私と由実さんは顔を見合わせる。
きっと、同じことを思っているはずだ。


「お母さんのお見舞いに行くふりして、笠木に会えばいい」
「ふりではなく、きちんと瑞希さんのお母様のお見舞いにも行きますよ」


入院していると知っていながら、行かない選択肢はない。


「ついででいいんだよ。元気なんだから」
「じゃあ、私も行こうかな。瑞希のお母さんに久々に会いたいし」
「ただの骨折なんだってば……」


瑞希さんは嫌そうにしているけれど、それでも行かないとはならなかった。


そしてラーメンを食べ終え、私たちは解散した。
< 133 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop