君への愛は嘘で紡ぐ
「お嬢様……あ!玲生くんが好きな人も、お嬢様って言ってた!同一人物なのかな?」


お母様はなんだか楽しそうに話しているが、その名に私も由実さんも固まる。


「玲生って……笠木玲生?」
「そうそう!知り合い?」
「……高校の同級生」


由実さんは少し悩み、そう答えた。


由実さんからすれば、笠木さんはただの同級生だから、その表現が正しいだろう。


「じゃあ、やっぱりあなたが?」


どこまでもお母様とのテンションが合致しない。


お母様の目が輝く。


あなたが?と言われても、どう言えばいいのかわからない。
そもそも、笠木さんが本当に私のことを好きかなどわからない。


「椿さん、今日は賑やかですね。お客さんですか?」


答えに迷っていたら、男性の声がした。
出入り口を見ると、懐かしい人が立っている。


その人は私の顔を見て立ち止まった。


「玲生くん、こんにちは。娘の友達がお見舞いに来てくれたの」


笠木さんは硬い笑顔を作り、踵を返した。


「玲生くん!?」


お母様が呼んでも、笠木さんは帰ってこない。


私の顔を見て逃げたということは、やはり私には会いたくないということで、お母様が言っていた、私を好きというのは、きっと勘違いだろう。
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