君への愛は嘘で紡ぐ
鈴原さんを見上げた笠木さんは、泣きそうな顔で笑った。


飛び出しそうになるのを堪える。


「……わかった。また来る」


鈴原さんは低い声で言うと、振り向いた。
私は慌てて角に戻る。


鈴原さんがいなくなって、笠木さんの病室に入った。


「こんにちは、笠木さん」


笠木さんは頭の先から足先まで、驚いた表情で見てきた。


「こんにちはだけど……その格好どうした?お嬢様らしくなくね?」
「知り合いに借りて……」


違う。
私が話したいのは、服装の話ではない。


……いや、何をしに来た?


私の頭の中は、笠木さんと鈴原さんの会話でいっぱいだ。


「……手術をすれば、治るって……生きたくないって……」


笠木さんの顔に、どうしてそれをと書いてあったが、すぐに察してくれた。


「王子との話、聞いてたんだ?」


私は小さく頷く。
顔を上げられない。


「私は……笠木さんに、生きてほしいです。生きてください。笠木さんがいなくなったら、私は……」


ああ、そうだ。
笠木さんに、想いを伝えに来たのだった。


「……私は、笠木さんが大切です。失いたくありません。笠木さんの笑顔が見たいです」


話しながら、視界が滲んでいった。
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