君への愛は嘘で紡ぐ
「生きたくないなんて、言わないで……」


本音は、涙が自然とこぼれるように出てきた。
一度溢れ出すと、止まらなくなった。


「お嬢様、あれは王子の質問に答えただけだから。だから、そんなに泣かないで」


そう言われても、あの言葉が嘘だったとは思えないから、涙は止まらない。


「きっと、私だけではありませんよね?笠木さんのお母様も、手術をしてほしいと思われているのではありませんか?」


顔を上げると、笠木さんは気まずそうに顔を逸らした。
やはり手術をしてくれと言われたのだろう。


「……お金の問題ですか?」
「それは違う」


即答だった。


「成功率の低い賭けに出る勇気がないんだよ。失敗したら終わり、じゃなくて、ギリギリまで母さんとか、お嬢様とか、大切な人と過ごしたいって思うんだ」


それでも、手術をしてほしいと思うのは、私のわがままだろうか。
成功すれば、もっと長い時間一緒に……


一緒に、いられない。


長ければ長いほど、私と笠木さんが共に過ごす時間は許されなくなる。


いや、それは言い訳だと奈子さんに教えられた。


私の願望を我慢する必要はない。


「……私は今だけでなく、これから先も笠木さんと過ごしたいです」
「……無理でしょ。あの王子が婚約者なんだろ?」
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