君への愛は嘘で紡ぐ
それは、お父様が決めただけだ。
私が望んだことではない。


「……政略結婚など、したくありません」


子供のように拗ねた態度をとってしまった。


「お嬢様ってのも大変なんだな」


どうしてこの人は私に告白をしておきながら、このような他人事のような態度ができるのだろう。


「あの感じだと、王子は相当お嬢様のことが大切なんだろうな。よかった」


よかった?


「……どういう意味ですか」


何がいいのか、全くわからない。


それに、鈴原さんが大切なのは、私ではない。
私の立場と、小野寺という名だ。


「お嬢様のこと、ちゃんと大事にしてくれそう」


違う。
彼が私を大切にしてくれるかなど、どうでもいい。


「……私が鈴原さんを選ぶと、ここには来れなくなりますよ」
「マジか。それは困るな」


真剣な表情で間髪入れずに答えたから、少しおかしくて笑ってしまった。


「困るのですか?」


笑いながら聞いたが、笠木さんがまっすぐ私を見つめてきたため、笑うのを止める。


「やりたいことを我慢するのは、好きじゃないからな」


笠木さんだ、と思った。


ずっと笠木さんと話していたが、あのころの笠木さんに出会えたような気がした。
< 161 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop