君への愛は嘘で紡ぐ
「俺は、死ぬまでの時間をお嬢様と過ごしたい」


少し頬が赤いように見える。
照れているのだろう。


私も、笠木さんと過ごしたい。
そのためには、やらなければならないことがある。


覚悟を決め、深呼吸をする。


「少しだけ、時間をください」


笠木さんは眉尻を提げて首をひねった。


「父と話をしてきます」
「話?なんで」


笠木さんは知らなくていい。
無関係ではないとしても、笠木さんが知るべきことではない。


「……笠木さんは、私がお嬢様でなくとも会いたいと思ってくださいますか?」


あのときの言葉は嘘だったと聞いた。
それでも、二年忘れられなかったことは、そう簡単には覆らない。


お金持ちだから、相手をしていた。


「俺が会いたいのは、小野寺円香だ。お嬢様とか、関係ない」


力強く、私の目を見て言ってくれた。
嘘ではないと、信じたい。


私の頬は緩む。


「では、次は小野寺円香として会いに来ますね」


自然と笑うことが出来た。


何が嬉しいのか、わからない。
これから先、待ち構えているのはよくない未来だというのに、浮かれている。


「お嬢様!」


病室を出ようとした瞬間、笠木さんは叫んだ。
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