君への愛は嘘で紡ぐ
私は恐る恐る振り返る。


「何をする気だ?」


笠木さんの真剣な表情は変わらない。
だが、少し私を睨んでいるように見えた。


「ですから、父と話を……」
「違うよな?」


初めて笠木さんを怖いと思った。
どうして笠木さんが怒っているのか、わからない。


「俺との三ヶ月のために、家族を捨てる気か?」
「どうして……」


直接言葉にしたわけではないのに、どうして笠木さんはわかったのだろう。


家族を捨てる、というのは語弊があるかもしれない。
しかし、あのお父様と話して、そうならない結末が想像できない。


鈴原さんとの婚約を破棄したい。
笠木さんのそばにずっといたい。


そんな願望を聞き入れてくれるような人ではない。


わかっているが、今回は譲る気はない。
現在のような家出状態になるか、最悪縁を切られる。


そう、覚悟したのだ。
縁を切られたとしても、私は笠木さんといることを選ぶ。


すると、笠木さんは頭を抱えて大きなため息をついた。


「その顔、何言っても無駄だな?」


無意味と言えばそうだろう。


「わかったよ。お嬢様が思うようにすればいい。ただ、これだけは覚えとけ」


笠木さんの鋭い視線が私を捉える。
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