君への愛は嘘で紡ぐ
「私は円香が道を踏み外さないよう、幸せになれるようにしてきた」


それは、私が染めた髪を切ったことと、婚約者を勝手に決めたことを言っているのだろう。


「円香を大切にしたいと思っていても、どう接すればいいのかわからなかった。だから、どうしても厳しくあたってしまった」


だとしても、やりすぎだったように思う。


「婚約に関しては、円香のためだった……そう言い切りたいが、会社のためでもあった」
「……正直ですね」


奈子さんが言っていた話通りのことを言われると思っていたため、拍子抜けしてしまった。


「隠しごとをして、また家を飛び出されては困るからな」


たしかに、全て私のためだったと言われても信じなかっただろう。


さすがにもう家出はしないが。


「円香がどうしたいかを聞いてやることが、円香を幸せにすることに繋がると聞いて、間違っていたとわかった。だから、教えてほしい」


お父様と目が合うが、今までのように目を逸らすことはしなかった。


「私は、笠木さんと一緒にいたいです。鈴原さんと結婚したく、ありません……」


後半の願いを言っている間に声が小さくなった。


親不孝者だろうか。
お父様の会社のことを考えることが出来ない、最低な娘だろうか。
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