君への愛は嘘で紡ぐ
笠木さんの手は冷たくて、骨ばっている。
だけど、じわりと笠木さんの温もりが伝わってくる。


笠木さんの歩けるペースに合わせて、足を進める。
汐里先生がしていたように、笠木さんを支えながら歩くのは大変だが、少しでも役に立てるならと懸命に隣を歩く。


「力みすぎ」


笠木さんはつらそうにしているのに、優しく微笑んだ。


全身に力が入っているのは、自分でもわかっていた。
緊張もあるが、一瞬でも気を抜くと笠木さんと共に倒れてしまうような気がしていた。


「普通に歩いて大丈夫だから。ちゃんと手すり持ってるし」


そう言われて左を見ると、しっかりと手すりを握っていた。


私の緊張を返してほしい。


「言ったろ?ただお嬢様と手繋ぎたいだけだって」


笠木さんは得意げに言うけど、私は余計に体温が上がってしまった。


笠木さんと手を繋げることは嬉しいけど、それ以上に恥ずかしかった。


横からまた笑い声が聞こえる。


「お嬢様、顔真っ赤」


まるでからかわれているような気分だ。


「笠木さんのせいです!」


照れ隠しで大声で言ってしまった。
近くにいる患者さん、もしくはお見舞いに来た人、看護師の視線を独り占めしてしまい、さらに恥ずかしくなる。
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