君への愛は嘘で紡ぐ
「うん、知ってる」


笠木さんは周りを気にせず、歩き続ける。
私は笠木さんに手を引っ張られるように足を踏み出した。


すぐに隣に立てそうな速さだったけど、なんとなく、このまま歩き続けるのも悪くないと思って、私は笠木さんの背中を見つめていた。


「おかえり、二人とも。って、小野寺さん大丈夫?顔真っ赤だけど、熱?」


笠木さんの病室に入ると、汐里先生が本気で心配してくれたけど、熱ではないと言い切れる。


「違うよ、汐里さん」


笠木さんは部屋の中に入っても手を離さない。


廊下を歩いている間もいろんな人に見られたけど、汐里先生に見られる方が恥ずかしくて、顔が上げられない。


ベッドに腰を掛けてもなお、私を見上げているだけで、離そうとしない。


「一回繋ぐと、離したくなくなるな」


笑いながら言われると、冗談なのか本気で言っているのかわからない。


だけど、離したくないのは私も同じで、少しだけ握り返した。
そうしたせいか、笠木さんは左手を私の手首に添え、そっとおろした。


話したくないと言ったのは嘘だったのだろうか。


「あんまり可愛いことしないように」
「どうしてですか?」


質問を返すと、笠木さんは頭を抱えた。
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