君への愛は嘘で紡ぐ
それを聞いた瞬間、どうしても表情が見たくて、私は笠木さんの腕を引っ張った。


笠木さんは私の行動に驚いていて、その独り言が本心なのかはわからなくなった。


「今の、本当ですか……?」


恐る恐る聞くけど、笠木さんは答えるよりも先に体の向きを変えた。
横向きになったことで、顔が見えやすくなった。


そして私が笠木さんの手首を掴んでいたはずなのに、それは簡単に外され、右手を左手に絡めてきた。


「本当ですよ?」


嘘を言っているようには見えないが、笠木さんの声があまりに穏やかで、喜びと照れが混じり、複雑だ。


私が反応できないでいると、笠木さんはまた仰向けになった。


「でも……手術したいって言っても、金がないし……」
「父に相談してみますか?」


それは何気なく出てきた言葉だった。
だけど、それを言った途端、笠木さんの纏う空気が変わったような気がした。


私は間違ったこと、嫌われるようなことを言ったのかもしれないと、不安に襲われる。


「友達の親の金で手術したいとは思わねえよ」


笠木さんは寝返りをし、背中しか見えない。


たったそれだけの言葉だが、私を悲しみの気分まで落とすには十分だった。


「友達、ですか……」
「そうでしょ。俺たち、付き合ってないじゃん」
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