君への愛は嘘で紡ぐ
その一冊をじっくりと見ていると、洗い物を終えた希実さんが隣に座った。
私がめくるアルバムを覗く。


「懐かしい写真がいっぱい」


希実さんの笑顔はとても暖かく、玲生さんを羨ましいと思った。


私の母親はこれほど優しい目を私に向けてくれたことはない。
お父様はずっと同じ屋根の下で暮らしているが、こうして私のアルバムを作ってくれているとは思えない。


自分の家庭環境を思い返していたら、希実さんは別のアルバムを手にしていた。


希実さんの邪魔にならない程度に覗き込むと、あるメッセージが目に入った。


『玲生の病気が見つかった……』


その近くにある写真に写る玲生さんは、目を赤く腫らして寝ている。


希実さんはその写真にそっと触れる。


「私……このとき、泣いてる玲生になにも言えなかったの。私自身がつらくて、玲生を励ますことができなかった」


今にも泣きそうな希実さんの声に、胸が締め付けられる。


「玲生が中学生になってからは、出てけとか、来るなってよく言われた。当然だよね。自分のことしか考えられない親なんて、私でも嫌だよ」


ページをめくりながら言う。


途中、写真が一枚もなく、希実さんの手紙だけが挟まっているページがあった。
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