君への愛は嘘で紡ぐ
すると、小さくノックの音がした。
重い腰を上げ、ドアを開ける。


「彼の葬式に行かないのか?」


そこに立っていたのは、喪服を着たお父様だった。
その格好、台詞にやはり玲生さんが死んだのだと思い知らされる。


「……行きます」


部屋のクローゼットの中に喪服があるため、お父様に背を向けて足を進める。
その途中で、お父様が電気をつけ、部屋が明るくなる。


「下で待ってる」


そしてドアを閉めた。


クローゼットを開け、喪服を手にするとまた涙が流れそうになった。


鼻をすすりながら着替え、玄関に向かう。
そこにはお父様と柳がいたが、柳は何も言ってこない。


「お嬢様、お待ちください」


奈子さんと入れ替わるように来た梨花さんが私の髪をとく。
それが終わると、二人に見送られて葬式場に向かう。


汐里先生と見かけない男性が受け付けをしている。


「小野寺さん……」


私に気付いた汐里先生は名前を呼んだが、言葉が出てこないのか、口を噤んだ。
そして受け付け台から離れ、優しく私を抱きしめた。


「……ありがとう」


感謝の言葉。
玲生さんと再会して、何度聞いただろうか。


「小野寺さんといた玲生君はとても幸せそうだった。ありがとう」
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