君への愛は嘘で紡ぐ
そのわずかな隙間から、希実さんの顔が見える。


「こんにちは、円香ちゃん」


ゆっくりとドアを開けていき、そこに希実さんしかいないことがわかる。


希実さんは私の頬に手を伸ばした。
私の頬を撫でる。


「玲生のためにいっぱい泣いてくれたんだね」


私から手を離すと、希実さんは俯いた。
視線だけが私に向けられる。


「あのね、円香ちゃんさえよければ、うちで暮らさない?」


予想外の提案で、頭が追いつかない。


「私が、玲生さんの家で……?」
「うん、そうだよ」


玲生さんがいない場所で暮らしても、きっとつらいだけだ。


でも、こうして自分の部屋に閉じこもっているのもよくない。


私が玲生さんを忘れないでいるのも、ずっと好きでいるのも許してくれなさそうだが、私が引きこもって泣いていることが一番怒られそうだ。


何かをきっかけとして、前に進まなければならない。


十分すぎるくらい泣いたんだ。
少しは玲生さんがいない世界を受け入れよう。


「……暮らしたい、です」





希実さんとの同居を始めて、三年の月日が流れた。


私は大学を卒業し、お父様の会社に就職した。
私が誰とも結婚する気がないとなると、跡継ぎに困る。
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