君への愛は嘘で紡ぐ
苦笑するしかなかった。
フォローする言葉が思いつかない。


「学校じゃなきゃあの鋭さは発揮されないってのか?それもそれでどうなんだよ……」


それは独り言のようだった。


たしかに、学校での先生はすぐに私が悩んでいることに気付いてくれた。
でも、今日は……


「まあ、休みの日だしいいか」


笠木さんはそう言うと、背もたれから離れた。


「あの、笠木さん。話を聞いてくださり、ありがとうございました」
「一方的に喋っただけだから、気にするな。負けるなよ」


笠木さんは私の頭に手を置いて、戻って行った。


頑張れではなく、負けるな。


何に、とは言わなかった。
私に取り入ろうとする大人たちなのか、それとも私自身なのか。


「……全部に、だよね」


今の私は弱い。
現実から逃げてしまうほど、弱い。


強くなろう。


「あ!お姉ちゃん!」


覚悟を決めてその場を離れようとしたとき、聞き覚えのある声がした。
それは笠木さんが私のカバンを渡していた少女だった。


「お姉ちゃん、カバンありがとう」


少女は本当に大切そうにカバンを抱きしめている。
無邪気な彼女に、どう答えれば……


『自分を見てほしいなら、相手を見ろ』
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