君への愛は嘘で紡ぐ
母さんの指を叩き落とす。


それなのに、母さんは笑っている。


「そんなこと気にしてたの?玲生は小さかったんだから、仕方ないよ」


仕方ない、で済ませられる母さんは本当に尊敬する。


子供に死にたいとも取れるようなことを言われて、平気なはずないのに。
かなり苦しんだはずなのに。


「私は今、玲生が生きようとしていること、私と旅行してくれてることが嬉しくて嬉しくて泣きそうなんだから」


信号が青になり、車は進む。


母さんの言葉に、俺が泣きそうになる。
気付かれたくなくて、窓の外を眺める。


「……大袈裟だから」
「ん?なんか言った?」
「なんでもない」


すると、ポケットに入れているスマホが振動した。
取り出してみると、汐里さんから電話がかかっている。


「玲生くん、なんで退院したって教えてくれなかったの!?」


思わずスマホを耳から話してしまいたくなるくらい、大きな声だった。


「ごめん」
「それで、今どこにいるの?」


俺は母さんを盗み見る。
また歌を歌っている。


そんな母さんを見ると、心の中の闇のようなものが消えていく。


「母さんとドライブ中」


俺はそれだけを言うと、一方的に電話を切った。
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