君への愛は嘘で紡ぐ
俺はポットのボタンを押す母さんの手に、自分の手を重ねた。
急須を受け取り、お茶を淹れる。


「そんなことない。俺は母さんに感謝してるよ」


淹れたてのお茶を母さんに渡す。


「産んでくれてありがとう」


母さんはまっすぐ俺を見る。
そして口元を抑え、声を殺して泣いた。


静かに泣く母さんの涙があまりに綺麗で、見とれて動けなかった。


母さんの涙が止まったときには、もう日が暮れかけていた。
それぞれ露天風呂を堪能し、夕飯を食べることにした。


部屋に運ばれてきたのは刺身としゃぶしゃぶがメインの食事だった。


「玲生、学校は楽しい?」


母さんは刺身に醤油をかけ、一切れを口に運ぶ。
それが美味しかったらしく、幸せそうな顔をしている。


「最近世間知らずのお嬢様が転校してきて、結構楽しいよ」
「お嬢様って、お金持ちの娘さんってこと?」


茶碗蒸しを食べながら頷く。


「そんなお嬢様が、玲生の学校に?どうして?」
「さあ?社交場が疲れたとは言ってたけど」


次はしゃぶしゃぶに手を伸ばす。
どの料理も美味しくて、箸が進む。


「玲生、その子のこと、気になってるの?」
「冗談やめてよ。交友関係を作っても、恋人は作らないんだから」
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