君への愛は嘘で紡ぐ
それを食べているときも帰るときも、母さんの言葉が頭から離れなかった。


俺は、誰かを好きになると、相手に何かを求めてしまうような気がして、怖くてそういうことには関わらないようにしてきた。


相手が自分の想いに応えてくれたら、相手も同じように俺のことを好きになってくれたら、先にいなくなってしまう俺は、相手を残してしまう。


きっと、深く傷つけてしまう。


俺は、それが嫌だ。


「……玲生、私が言ったこと、気にしてる?」


車で帰っているとき、母さんが俺の様子を伺うように聞いてきた。


「……怖いんだ。誰かを好きになるのが」


言葉にすると、その恐怖が明確になって、声が震える。


「中途半端に誰かを好きになることはできない。かと言って、真剣に好きになったら……欲が出そうで……もっと生きたいって」


堪えきれずに涙が落ちる。
まさかこんなことで泣くとは思ってなくて、自分で驚く。


「ずっと、後悔しないようにっていろいろしてきた。それが、全部無駄になるような気がするんだ」


全部言ってしまうと、少し気持ちが楽になった。
指で涙を拭う。


「……玲生は、いい子だね。自慢の息子だ」


今の話でどうしてそうなったのかわからない。
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