君への愛は嘘で紡ぐ
彼女はじっくりと私の髪を見つめる。


「毛先だけだから。月曜にはすぐ切る予定」


人見知りなんてしている場合ではないという環境にいたはずなのに、緊張して会話ができない。
笠木さんが会話を続けてくれているのが、申しわけない。


「ふむふむ。それで、何色にしますか?」
「……赤で、お願いします」
「明るめ?暗め?」


そこまで考えていなくて、笠木さんに助けを求める。


笠木さんはため息をついた。


自分でやりたいと言っておきながら、他人任せにしておけば、それは嫌にもなる。


似合わないことは言うべきではなかった。


「彼女に似合うほうで」
「……それだと、赤っていうよりピンクのほうがいいと思うんだけど。こう、柔らかい感じで」


美容師さんは雑誌を取りだし、ページを開く。


そこは赤系の色のサンプルだった。
たしかに、赤よりもピンクのほうが可愛いように見える。


「……赤が、いいです」


ピンクも捨て難いけど、やっぱり笠木さんが選んでくれたから。


「可愛い顔するねー。了解。それじゃあ、ここに名前書いて。……よし。では、こちらへどうぞ」


荷物を笠木さんに預け、案内された席に座る。


「小野寺さんは、玲生が好き?」
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