君への愛は嘘で紡ぐ
カットケープをつけてもらいながら、そんなことを聞かれた。


鏡越しに目が合う。


「赤を選んだのも、玲生でしょ」


どこまでバレているんだ。
そんなにわかりやすい反応をしていたということか。


美容師さんは私の髪に触れる。


「いいなあ。青春だね」
「……私、そんなにわかりやすいですか……?」


笠木さんを盗み見ると、すっと私の耳元に顔を近付けた。


「玲生は鈍いから大丈夫」


美容師さんは数回私の肩を叩いた。


そういう問題だろうか。
笠木さんに気付かれなければいい、なんてことはない。


気付かれてはいけないのは、笠木さんだけではない。
柳にも、お父様にも気付かれてはいけない。


もし気付かれたら、きっとすぐに転校させられてしまう。


それだけは避けたい。


「それにしても、なんでこんな中途半端な時期に髪を染めようなんて思ったの?」


たしかに、誰もが気になることだろう。
まだ長期休みでもないのに染めるのは妙だと思うだろう。


「笠木さんにやりたいと思ったら、すぐに行動に移そうって言われましたので」
「玲生に悪影響されちゃった?」


なんだか悪い笑みを見ると、笠木さんが悪く言われているような気がしてくる。
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