君への愛は嘘で紡ぐ
「玲生はよくもわるくも自由だからね。毒されすぎないよう気をつけてね」


それ以上会話をしたくないと思ったけど、彼女は仕事に集中して、お互い静かになった。


一束で毛先だけということで、一時間程度で終わった。


「どうかな?薄めにしてみたけど」


左側の毛先だけ、赤くなっている。
見たことのない色に、違和感を覚える。


「玲生。どう?」


私が感想を言わなかったことで、美容師さんは笠木さんを呼んだ。


笠木さんが鏡越しに私を見た。
何を言われるのかと怖くなって、目を伏せる。


「悪くないんじゃない」


似合ってるではなく、悪くない。


それでも、褒め言葉に変わりないと思うと、嬉しくて、振り返った。


「本当……?」


笠木さんは私の頭に手を置いた。


「本当だから、安心しろ」


笠木さんが手を離し、もう一度鏡を見る。


笠木さんが悪くないと言ってくれたことで、自分でも悪くないなと思えた。
赤色にしてよかった。


会計を終え、店を後にする。


すれ違う人に見られているような気がして、俯いて歩く。


「金髪の隣に赤く染めた女。関わりたくないって思われてるだろうな」


私の思いとは裏腹に、笠木さんは楽しそうだった。
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