君への愛は嘘で紡ぐ
それが窮屈で、嫌だったはずだ。


なにより、やりたいと我慢していては、笠木さんにまたつまらないと言われてしまう。


私は、変わりたい。


今回はたしかにやりすぎた。
反省するが、後悔はしていない。


次は誰にも怒られないように……


「……そんなもの、ない」


冷静に考えて、どれもお父様が許してくれるとは思えないことばかりだ。
今日みたく怒られるだろう。


本当に、早くこの家から出たい。


そんなことを思いながら、私はスマホを手にした。


日曜日、由実さんたちと遊びに行くことになっていたけれど、髪を切られたために断ろうとした。


『親に反対され、髪を切ってしまったので、日曜日は遊べません』


文章にするととても冷たいように感じる。


震える指先でグループチャットにメッセージを送った。


『赤髪を見るのはおまけなんだけど』
『私たちは円香ちゃんと遊びたいだけだよー』


二人から返事をもらって、画面が滲んでいく。
涙が画面に落ちた。


遊ぶ約束の理由は、私が髪を染めたところを見るためだけだと思っていた。
そんなの関係なく、二人は私と遊びたいと思ってくれていたらしい。


『日曜日、楽しみにしてるね』


私も、楽しみだ。
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