君への愛は嘘で紡ぐ
「瑞希さんのおすすめが食べたいと言ったら、怒られるでしょうか……」
「どうだろう。そこまでこだわりはないはずだから、大丈夫だと思うよ」


それならば、そうしよう。


好き嫌いもなく出されたものを食べる生活をしてきたから、自分の好きな味や食べ物がわからない私にとって、そうする以外選択肢はないと思った。


「まあ、円香ちゃんに好きなものを食べてほしいって思ってるだろうから、ダメって言われるかもね」


上げて落とすというのはこういうことか。


「自分の好みを考えたことがないので、わからないのです」


いかに自分がないのかを思い知り、ため息が出る。
そんな私を、由実さんは不思議そうに見る。


「なんでもおいしく食べれることは、いいことだと思うけどな」


私の悩んでいることに的確にアドバイスされ、動揺が隠せない。


「これから見つけていったらいいじゃん。好きな味。ね?」


由実さんの笑顔を見ると、不思議と安心した。


その提案が無理だとは思わなかった。
友人も好きな人もできたのだから、好みの味を見つけることなど容易いことだろう。


そうこうするうちに瑞希さんが行きたいというラーメン店に着いた。


席に座ると、店員がお水とおしぼりを人数分持ってきてくれた。
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