君への愛は嘘で紡ぐ
メニュー表には写真も載っていて、それがどういうものなのかわかりやすい。


「私は豚骨」
「あ、醤油ラーメン美味しそう」


瑞希さんと由実さんは即決だった。


「私も……」


早く決めなければと思い、瑞希さんと同じものを選ぼうとした。
だけど、瑞希さんの鋭い視線に気付き、言えなくなった。


「円香ちゃん、塩にするといいよ。そうしたら食べあいっこできるし」


メニュー表を見直して適当に選ぼうとしたら、目の前に座っている由実さんがそう言ってくれた。


その発想はなかった。
一人での食事が多く、誰かと食べる機会は基本的にパーティーのときのみ。


わけあって食べたことがない。


「……いいのですか?」
「円香ちゃんの好きな味探しってことで。いいよね、瑞希」


由実さんが隣に座る瑞希さんに確認すると、瑞希さんは気まずそうに頷いた。


頼むものが決まって、注文をした。
料理が届くまでの間、ひとまず水を喉に通す。


「そういえば、残念だったな」


由実さんはビニル袋に入っていたおしぼりを取りだし、手を拭いている。


「髪を染めた円香ちゃん、見たかった。そんなにお家厳しいの?」


あまり細かいことは言えないけど、お父様が厳しいことを今さら黙っても仕方ない。
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