君への愛は嘘で紡ぐ
「休みの間染めるくらいは、許してもらえると思ったのですが……」


俯くと、耳にかけていた髪が落ちてくる。
短くなってしまった髪に、また泣きそうになる。


「これだけ礼儀正しい、いい子に育てて、急に髪染めたなんてなったら、普通、嫌がるって」


瑞希さんは水を飲み干し、おかわりをもらっている。


「それに、大学生ならまだしも、高校生だから。親だけじゃなく、同級生とかも嫌がる」


そう言われて、初めて冷静になった。


笠木さんへの噂や態度を見ていればわかったことなのに、私は本当に目の前のことしか見えていなかった。


だからといって、お父様の行為を許すわけではないけど。


「そうだとしても……いくら娘でも、女の子だもん。いきなり髪を切られるのは嫌だよ」


私の思いを、由実さんが代弁してくれた。


そのとき、注文した料理が届いた。


「結果、笠木が悪い」


瑞希さんは割り箸を割りながら言った。


なぜそうなった、とは言えなかった。
私が髪を染めることに興味を持ったのも、染めてみようと言ったのも、笠木さんがきっかけだ。


笠木さんを悪者にしてしまうのは嫌だったけど、フォローのしようがなかった。


「……円香ちゃん、やってあげようか?」
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