結婚してみませんか？
『北海道にて、悠くんと』

あの時見た元彼との写真…。

恋ちゃんにとってココは思い出の地なのかもしれない。でもまだ何か胸の奥がつっかえているような気がする。

悠くん…悠…まさか、元彼って笹倉悠人！？

思い出してみるとあの写真、笹倉さんに似ていたかもしれない。

俺の中の謎だったパズルのピースが次々と埋まっていく。

恋ちゃんと笹倉さんの関係。

笹倉さんは恋ちゃんとは昔からの知り合いって言っていた。恋ちゃんも笹倉さんの前では何となくよそよそしい感じに見える。

恋ちゃんの元彼が笹倉さん…。

笹倉さんとの思い出の場所で愛おしそうな表情…あれは笹倉さんを思い浮かべての顔か。

やっぱり恋ちゃん、まだ笹倉さんの事…好きなのかな。

俺は恋ちゃんに声をかける事なく、足早にその場を立ち去った。

昼までに旅館へ帰る予定だったが何となく帰る気になれず、少し遅れて帰った。

部屋に戻ると、さっきまでのお洒落な恋ちゃんではなく、眼鏡姿のいつもの恋ちゃんがいた。

「いい写真は撮れましたか？」

「あ、うん。恋ちゃんは…何してたの？」

「…秘密です。」

俺は平然を装って会話するが、内心は穏やかではない。

恋ちゃんは俺と結婚して、幸せになれるのかな。

この旅行の後から、そんな事ばかり考えるようになった。
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