結婚してみませんか?
楽しいはずの旅行から帰り、また日常の日々に戻る。

俺はというと、忙しさを理由にいつも以上に恋ちゃんとの距離を置き、家の中でもあまり顔を合わす事はなかった。

実は笹倉さんの事が…って恋ちゃんから話を切り出されるのが怖かったのだ。

「はぁ、ダメだな俺。」

仕事の合間にため息をつきながら、ボソッと呟く。

ちょうどその時、携帯に着信が入るが知らない番号だ。

「誰だろ?」

取り敢えず携帯に出てみる。

「もしもし?」

「もしもし、相沢さん?詩織ですけど…。」

「詩織さん?」

そうか、合コンの時に連絡先交換したっけ。

「突然すみません。恋ちゃんの事で話があるんですけど、会って話できませんか?」

「恋ちゃんの事で?…分かった。今日はどう?」

「大丈夫です。じゃあ仕事が終わったらまた連絡しますね。」

「了解。」

会話が終わり携帯をポケットに戻す。

それにしても、恋ちゃんの事でって何の話だろ?恋ちゃんが何か詩織さんに相談したのかな。

まさか…笹倉さんの事、とか?

まぁ詩織さんなら色々情報持っているはず。今日会って恋ちゃんの話を聞き出してみるか。

その後詩織さんから連絡があり、詩織さんの方が早く仕事が終わるらしいので、俺の会社の最寄り駅で待ち合わせをした。

仕事が終わり詩織さんと合流すると、駅の近くにあるオシャレなカフェに入り早速話を始める。

「それで恋ちゃんの話って?」

注文したホットコーヒーを口にして詩織さんに話しかける。

「単刀直入に聞きますけど…この前2人で旅行に行きましたよね?その時、何かありましたか?」

「何かって…恋ちゃんが何か言ってた?」

「何も言わないからこうして相沢さんに聞いてるんです。旅行後の恋ちゃん、何だか元気なくて…。」

詩織さんは神妙な顔つきで話す。普段は全然感情を表に出さない恋ちゃんだけど、旅行後は目に見えて元気がなく、弁当も持ってこなくなり、時折大きなため息をついているらしい。

でも旅行で何かあったかと聞かれても、思いつくのは別行動の時間しかない。笹倉さんの事を思い出して愛おしそうな表情をしていたあの時…。

元気がないって事は、結婚を取りやめたいって事なのか?

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